歌がうまくなる方法・・・・と聞くと、まず発声練習が挙げられると思います。
カラオケに行く機会は誰でもあると思いますが、色んな人と行くと「この人上手いな」「この人微妙」と感じることが多々あると思いますが、発声だけで評価してますか?
腹から声が出てるからこの人のレベルは高い、喉に負担をかける歌い方だから下手に聞こえる、という評価基準でしょうか?
おそらく答えは「何か違うと思う」ではないでしょうか。
今回は、「何となくうまい」「何となく下手」と感じる原因を解き明かすとともに、発声以外の練習をどのようにやればよいかについて記載します。
1.腹筋と発声以外の歌の上手さの謎
歌の発声のやり方の一つとして、たっぷり息を吸って「腹筋に力をがっつりいれて」声を出すということをたまに耳にします。
試しにお腹にかなり力を入れた状態で歩いてみると、変な歩き方になってしまうのが分かると思います。
ロックやポップスのボーカルをやる場合、この状態で激しい動きができるように人知れず特訓する必要があるのでしょうか?
答えはNOです。
腹筋は、たくさん吸った息をコントロールするために使われるのであり余計な力は必要ありません。
たっぷり腹式呼吸で息を吸った状態で息を止めると、何も意識しなくても自然に腹筋に圧力っぽい力が入っていると思いますが、それだけで十分です。
歌が上手くなるためにやることと言えば「ボイストレーニング」「発声法」系の話が挙げられることが多いですが、発声練習以外に歌がうまくなる方法を聞くと、意外と答えに困る人が多いと思います。
冒頭にも触れましたが、歌の優劣とは、発声がしっかりしているかどうかだけで評価されるわけではないことは少し考えれば分かると思います。
長年ピアノをやっていたり、バイオリン等を幼少の頃から習っていた人の歌は、発声に関してはド素人のはずなのに上手く聞こえる事が多いです。
何故なのでしょうか?
2.発声以外の「上手く聞こえる」要素
ちょっとした実験を2つほどやってみましょう。
ギターのチューニングがしっかり合っている状態でクリーントーンでコードを弾いた後に、各弦のチューニングを無茶苦茶にして同じコードを弾いてもらいましょう。
また、同じくチューニングしっかり合った状態でギターソロ用のイイ音色で何かソロを弾いてもらい、チューニングをまた狂わせまくって同じソロを弾いてもらいましょう。
凄まじい違和感を感じるはずです。
コード、ソロ共にチューニングをいじる前後の音色は同じですし、もちろん演奏技術も同レベルですよね。
なのに明らかにチューニングがぴったり合っているほうがすっきり聞こえます。
これがピアノやバイオリンを長年やっている人がうまく聞こえる理由、さらに冒頭部に述べたカラオケ等で発声以外で上手い下手をなんとなく感じる理由なんです。
ピッチが正確にとれているかどうかなんですね。
音程(ピッチ)の感覚は絶対音感とは違って、きちんとしたトレーニングによって育てることができます。
なお、上手く聞こえる要素はピッチと同じくらい「リズム」も大切ですが、バンドにはドラムがいるので修正してもらえることが可能なので省略します。
3.発声法ばかりが重視される原因
現代ではレコーディング後に、ボーカルのピッチ補正は必須となっています。
録った歌声をピッチ補正ソフトで開くといかに不正確なピッチかがよく分かります。
Youtubeでピッチ補正の動画は沢山あり、どう変わっていくかがよく分かりますので、興味がある方は色々探してみて下さい。
こんなに大切なピッチに関しての情報が出回っておらず、なぜ発声方法ばかりが注目されているのでしょうか。
①元から歌が上手い人は自然とピッチ感覚が身についている
ピッチ感覚がどの程度身についているかは、身長のようにかなり個人差があり、元からピッチ感覚が正確な人は特に意識していないため、歌のコツを教わろうとしても発声法しか教えることができない人が数多くいます。
②長年の経験よりピッチ感覚は自然と補正されていく
長年ボーカルをやっていると、アコースティック等、自分の声がダイレクトに聞こえやすい環境で歌う事もあったりするので、自然に少しずつピッチ感覚が研ぎ澄まされて、意識せずともいつの間にか上達していた、という人も多く、こういった方もピッチに関して特に意識はしていないため、教えることはできません。
③分かってるけど教えない人もいる
音楽教室の先生に共通して言えることですが、彼らは商売でやっているため「実力がついたと感じる」「練習していると実感できる」「楽しく練習できる」ことを重視します。
本格的にピッチ感覚を鍛えるのは地味なイヤートレーニングとなり、実力がついた実感がわきにくいため、主に発声やリズムがおかしい所のみの修正を教えたほうが生徒さんの反応も良い上、モチベーションが保ちやすいので長続きします。
お金が絡むと、よほど高い目標をもっていて粘り強い生徒さんでもない限り、「楽しめる」ことを重視して授業を行うのが普通です。
例えばギターの場合「ピッキングフォームの修正や基礎練習をレッスン時間中延々とさせられる」、ドラムの場合「レッスン時間の大半が基礎打ち」とかになるとまず商売にならないと思います。。。
このように、歌のピッチは重要なのに、残念ながら注目されない事が多いです。
4.音感の鍛え方について
本格的に音感を鍛えるならハーモニーディレクターというピッチ・リズム練習に特化したキーボードのような機材と指導者がいるのが理想ですが、それが無くても音感は鍛えられます。
曲を歌う時、ギターやキーボードに歪みの少ない分かりやすい音色でゆっくりメロディーを一緒に弾いてもらい、その音と一緒に1音1音確かめながら歌うことを繰り返すことで音感は養えます。
また、歌い出しの最初の音だけもらって、ゆっくり伴奏無しで歌って、ワンフレーズ後(4小節後くらい)最初の音で止まって、再びその音をもらって、正確に音程がとれているかどうかをチェックします。
この方法は音大等でよく使われる教材の「コールユーブンゲン」での練習方法と似たものであり、ドレミファソラシドの音の幅を正確に取れているかどうかがチェックできます。
5.おわりに
主にピッチに関しての記事になりましたが、もちろん発声もリズムトレーニングも大切です。
音楽、特にバンドに関しては発声のように「これをすれば良い」と言われていることをただ鵜呑みにしてそのまま行うだけだと必ずどこかで頭打ちになってしまいます。
そんな時に「仮説をたてる」「実験してみる」「研究してみる」ことが打開のヒントになります。
発声練習以外にも、マイクやボーカルエフェクターの機材について調べて考えながら試してみる、ピッチ補正についてフリーソフトを触ってみるなど、色々な方面へと努力すると思わぬところに上達のヒントがあったりします。
「上手く聞こえる」ボーカルから「上手い」ボーカルへと進化するためには一筋縄ではいかないので、試行錯誤してみてはどうでしょうか。
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