こんにちは。
ローディーという仕事をしている谷と申します。
前回の記事ではライブ、コンサートにはかかせないスタッフ「PA」と「照明」
この2つの職種の実際の現場での仕事内容を詳しく書かせてもらいました。
記事の最後には「ローディー」という職種も少しだけ説明させていただきました。
今回は僕が本業としている「ローディー」についてご紹介させていただければと思います。
前回の記事を先に読んでから、こちらを読むとより分かりやすくなると思うのでぜひ御覧ください。
ローディー以外の呼び名
日本ではローディー(roadie)と呼ばれることが多いですが、海外では「back line」という言い方がメジャーかもしれません。
※日本でもback lineと言われることもあります。
他には「instrument technician」などと呼び方は違いますが、ほぼほぼ同じ意味になります。
instrument technicianは楽器全体のことを指しますが、更にそこから細分化され、
「Guitar technician」「Drum technician」など楽器単体を指す言葉もあります。
テクニシャンとは「特化した知識を持ってる人」
つまり
ギターの知識に特化した人なら「ギターテクニシャン」、ベースなら「ベーステクニシャン」、キーボードなら「キーボードテクニシャン」など。
略して「ギターテック」「ベーステック」などと言われます。
特に規模が大きくなってくると、一つのライブにローディーが4人、5人と行き、アーティスト一人ひとりにローディーがつく為、〇〇テックと呼ばれる人達がこういう呼ばれ方をします。。
コンサートやレコーディングの現場ではごくごく普通に使われる言葉です。
それらの総称として日本ではローディーと呼ばれることが多いです。
人によって違ったり、場所や環境によって違う呼び方になってしまうくらい曖昧ではあるのが現状です。
ローディーの仕事内容
ローディーの仕事は簡単に言うならば、アーティストの楽器を「管理」「調整」「セッティング」です。
「管理」
リハーサル現場では持ち込まれたアーティストの楽器を把握し、トラブルが起きそうな機材などは事前に直したり交換したりします。
本番の会場ではなるべくステージで管理します。
ギターなどを楽屋に持っていってしまうと温度や湿度がステージ上とは変わってしまうため、本番との温度変化が少なくなるようにステージ袖において管理しておきます。
本番中は曲によってギターを持ち替えたり、使用する楽器を変えたりするので、それを準備して交換し、ライブをスムーズに進行するのが役目です。
また本番中に機材トラブルなどがあった際は即座に対応し、瞬時にどうするか判断をしないといけません。
「すぐ直るのか」
「それとも機材を交換しないとダメか」など
「こうなった場合はこうする」
「しばらくこの音色は使わないから、とりあえずこの曲は乗り切れる」
どう対処するかの判断は今までの自分の経験値しか頼りになりません。
本番中に音が出なくなったときの「やばい」「原因なんだろ」などと、ほんとに一瞬の間にものすごい情報量を自分の頭の中で駆け巡らせます。
機材トラブルは前兆があるものと、ないものがあるので完全には防げません。
起きるときは起きてしまうのが機材です。
ただ起きたときにどれだけ「冷静」に「迅速」に「的確」にローディーが動けるかが大切なところだと思います。
ライブが終われば次のライブまで預かることもあります。
その際、温度や湿度で影響を受けやすいギターやベースなどは空調がコントロールできる部屋で保管したりします。
「調整」
楽器を「ミュージシャンが演奏しやすいように調整」します。
ギターやベースであれば「ネックの反り調整」「オクターブチューニング」「アンプの音作り」など。
ドラムであれば「ドラムチューニング、音色作り」「グラム数でスティックを分ける」など。
ミュージシャンの好みは人それぞれなので、それに合わせてローディーは調整します。
参考書に載ってるセッティングというのはあくまで参考であって誰にも当てはまるわけでありません。
ここをいじったらこうなるという理屈は覚えるのは大事ですが、ミュージシャンが演奏しやすいように調整し、且ついい音に調整するのが最優先になります。
「セッティング」
アンプやエフェクターボード、ドラムセットにピアノ、キーボードなど、ミュージシャンが持ってきた機材を組み立てます。
こちらもミュージシャンが演奏しやすいセッティングがあるので、それを覚えてそれ通りに各会場でローディーがセッティングしておきます。
今まではミュージシャンの演奏しやすさを最優先してきましたが、セッティングに関しても勿論最優先ですが、これに関してはイレギュラーがあります。
それは会場のサイズ、運ぶ機材車のサイズによって多少変更をお願いする場合があります。
ZEPPやホール以上の規模であればステージも広いのであまり変更はありません。
機材車もこれくらいの規模であればトラックでの機材車になることも多いので概ね大丈夫だと思います。
会場やステージが狭いところは持ち込んだ機材をいつも通りにセッティング出来ないことがあります。
そういった場合、いつもとは違う並べ方をして対応し、ミュージシャンと直接確認して微調整をしていきます。
一日の仕事の流れ
ローディーに限らず全ライブスタッフに共通することですが、会場の規模で流れは変わります。
なので今回はZEPP規模を目安にしたローディーの一日の流れをご紹介致します。
①会場に入りしてすぐに照明やPAなどの機材を先に搬入し、最後に楽器を搬入
②ステージ袖で楽器を仮組み
③ある程度、他スタッフが仕込み終わったら、ステージ上で楽器をセッティング
④楽器調整&楽器の音作り
⑤リハーサル
⑥リハ終了後、最終調整
⑦本番終了後、楽器の撤収
⑧機材車orトラックに楽器を積み込む
大まかな一日の流れはこんな感じになります。
①〜③は会場が大きくなるとスタッフもその分多くなるので変わってきますが、
④〜⑧は会場関係なくこういう流れが多いかと思います。
※ワンマンでの話。イベントや対バンでは全く変わります。
②、③のときは照明さんやPAさんの仕込みの邪魔にならないように導線を確保しつつ、空いたスペースで楽器を仮組みします。
もし舞台監督さんがいる現場であれば、舞台監督さんに確認をとってから自分達の仕事をはじめるというのが普通です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ローディーの仕事を「管理」「調整」「セッティング」に沿って説明しました。
前回もお話した通り、書いてあるのはごく一部であって、これが全てではありません。
あくまで大まかな内容や流れとして捉えていただければと思います。
そして
ローディーの仕事の根本にあるのは「アーティストの機材を扱う」ということです。
ローディーの機材でもなく、会社の機材でもなく、演奏に必要不可欠なアーティストの機材を扱う仕事です。
何よりも一番大事に扱うものだと僕は思っています。
機材の金額が高いとか安いとか関係なく。
アーティストがローディーを信頼をして預けてくれた楽器を守り大切に扱う。
それがローディーの仕事です。
これは10年20年と続けてきた今も変わらず、現場に行く度にその緊張感を持って仕事をしています。
ただ誰よりも一番近くでライブを見てるのはローディーです。
それと同時にお客さんの嬉しそうな顔もステージ袖から見ています。
プレッシャーも責任もある仕事ですが、それ以上に感動や楽しさ、やっててよかったと思える仕事がローディー、そして音楽業界にはそのような仕事が沢山あります。
ぜひ音楽業界の裏方にも目を向けてみてください。
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