まず、わたしはというとレモンオイルを”塗る派“である。
弦を交換する際、新品の弦に見あうようなツヤツヤの指板にしたいが為に、毎回実施している。
個人的には良い保湿になっていると思っていたが、塗ることに賛否両論あるようなので、指板ケアにおける”レモンオイル”の有用性を深掘りしてみた。
なぜレモンオイルを塗るのか?
冒頭で述べたように、レモンオイルを塗布する目的は、指板の汚れ落としと保湿である。
なぜ保湿する必要があるかというと、ローズウッド指板とエボニー指板は、乾燥するとヒビ割れたり、フレットが浮いてしまったりと悪影響を及ぼすと考えられているためだ。
よって、弦交換の時など適切な頻度で、指板にレモンオイルを塗って、ケアしてあげるのが一般的ではないだろうか。
ただし、レモンオイルを塗り過ぎた場合、木材が膨張したり、柔らかくなって、結果的にフレットが浮いてしまうという説もある。
要するに、塗らないのも、塗りすぎるのも良くない”ほどほど“という結論に至ってしまうことが多い。
それでは、その”ほどほど”というラインを明確にしていきたいと思う。
なぜ塗らない方がいいのか?
ネット検索でよく見かけるのは「メーカーが推奨していないから」といった意見が多いようだ。
具体的にいうと、世界的なアコースティックギターのブランド”マーティン“は、酸が塗装を破壊し、フレットや弦を腐食させるとの理由で、レモンオイルの使用を推奨していないのである。
更にレスポールで有名な”ギブソン“も、かたく絞った柔らかい布での水拭き→乾拭き、というケアを提案しており、指板に付いた手の油分は頻繁に取りのぞかない方が良いという見解のようだ。
ただし、「あまり弾かれていないギターの乾燥対策として使用するならば」と前置きしたうえで”ミネラルオイル“の塗布を推奨している。
要するに、レモンオイルの酸がダメであって、ミネラルオイルといった酸化が少ないオイルを使うことは否定していないのだ。
それでは、この2大メーカーの意見を踏まえて、指板のケアには何を使ったら良いのか考えてみた。
なにを塗ったらいいのか?
“塗らない派”の意見からも、木材にはある程度の保湿が必要ということは明らかになった。
よって、”保湿”のために、やはりオイルを塗った方が良いという結論になるのではないだろうか。
ただし、前項の”ギブソン”が乾燥対策に推奨しているのは”ミネラルオイル”であり、この記事の表題でもある”レモンオイル”とは成分が異なる。
調べてみるとわかるが、レモンオイルについても、石油系や蜜蝋系などメーカーによって成分と目的が細分されるので、代表的な製品の特徴を調べてみた。
【FERNANDES / LEMONOIL】
レモンオイル界のロングセラー商品だが、こちらは鉱油と植物抽出油で構成されている”石油系“であるため、100%のレモンオイルではない。
よって、ラッカーなどのデリケートな塗装面には使用できない。
そして、揮発性が高いため、汚れ落としとしては優秀だが、サラッとしているため、ツヤツヤな指板に仕上げたい場合は、保湿用のオイルで仕上げる必要がある。
【Freedom Custom Guitar / SP-P-11 Lemon Oil】
蜜蝋と、天然のレモンオイルでできているため、ラッカー塗装やオールド製品にも使用できる。
そして、保湿に特化しているため、塗布したあとのベタつきはあるものの、揮発せずに艶をキープしてくれる。
ただし、酸によるフレットや弦のサビの誘発が懸念される。
【BIGBENDS / FRET BOARD JUICE】
この製品は、石油から精製される”ミネラルオイル”が主成分となっているため、油膜による指板の保湿が期待できる。
ミネラルオイルは、別名”流動パラフィン”とも言われているのだが、これはベビーオイルの原材料にも使われている。
よって、浸透性という観点からも、安定した保湿に最適と言える。
そして、”酸化”が極めて少ないので、フレットや弦に付着してもサビさせる心配がないという利点も挙げておく。
オススメのオイル
前項をまとめると、レモンオイルに代わって、”ミネラルオイル“を使った指板ケアが、これからの新常識と言えることがわかった。
よって、オススメのオイルは“BIGBENDS / FRET BOARD JUICE”になるのだが、もう一つ便利な商品を紹介しておこう。
“dmiguitarlabs ( ディーエムアイギターラボ ) FRET BUTTER”
指板のケアと同時に、フレットも磨けてしまうという、画期的な商品である。
どういうものかというと、パッケージの中に”フレット洗浄液が染み込んだクロス“が入っており、
これでを拭いたあとに、乾いたクロスで余分な油分を拭き取ると、フレットはピカピカ、指板はツヤツヤになるのである。
ただし、オイルフィニッシュの指板に使うと、指板が黒ずんでしまうため、基本的にはローズウッドやエボニーなど色の濃い指板への使用がベターのようだ。
該当する楽器を持っている人には、ぜひ試してみてもらいたい。
まとめ
指板やフレットが汚れていると、音が詰まったり、チョーキングに支障が出るといった、音質的なデメリットもあるが、少しだけお金と時間をかけて、愛機の手入れをしてあげることで、あなたにかけがえのない一本になってくれるのではないだろうか。
使い込まれた楽器というものは、独自のツヤと輝きをもっているのである。
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