倍音から逆算したドラムチューニングについて

ドラム・パーカッション関連
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スタジオの練習を録音をしてみた時、スネアの音だけやかましくてフィルインのタムになった瞬間音がよく聞こえなくなったり、オープン気味のハイハットにスネアが負けている状態というのは、ドラマーをやっていたらよくある話です。

他の楽器の音も聞こえつつドラムの音一つ一つが綺麗に鳴っている状態がバンドの中のドラムのサウンドとしては理想ではないでしょうか。

筆者は幼少の頃よりピアノを習っていたため絶対音感があり、また習った先生は色んな楽器のマルチプレーヤーで、レッスンの中で細かい音程の高低を聞き分ける耳のトレーニングをしたり、音楽の理論を教えてくれる方でした。

10代の後半からドラムを始めたのですが、ふとその先生から習った音楽の理論の「倍音」を思い出し、所属していたバンドの協力を得ながら太鼓のチューニングについて色々実験を行っていくうちにバンドサウンドの中でのドラムの音が驚くほど「しっかりと音が聞こえるが、他パートの音を邪魔しない」チューニングを発見しました。

この記事ではそのチューニングの紹介をしていきます。

1.倍音とは?

例えば440Hz(ヘルツ)の音を鳴らした時、実はその音の成分として、880Hz、1320Hz・・・と2倍、3倍といった整数倍の高い音が鳴っています。

バンダーランド内の以下の記事にも倍音についての記載がありますのでご一読頂ければと思います。

ミキシングをすると良く分かるのですが、どの楽器が何Hzを中心に使っているかということは非常に大事で、2つの楽器が同じ周波数帯を使うとどちらかの音が埋もれてしまったり、粒立ちがよく分からなくなってしまいます。

ここで、タムの中心ではなく、ナット側から3cmくらい内側を何箇所か軽く叩いてみましょう。(チューニングキー等で叩いたのでOKです)

叩く場所によって違う高さの音になっている状態だとどういうことが起こるか分かりますか?

色んな音程の音が鳴る状態ということであり、倍音成分も色んな周波数帯が鳴っているということで、他の楽器の周波数帯とかぶりやすくなっており、結果的に「埋もれるか他の音を食う」音になっています。

なので、まずはナットの近くの音を揃えることが出来るようになりましょう。

2つの音の「高い・低い」がイマイチ分からない場合は、ギターパートの人に頼んで以下の方法で耳を鍛えてみて下さい。

生音で3弦4フレットと2弦解放(要するに同じ高さの音)をまず「きちんとチューニングした場合」で弾いてもらって、直後にどちらかの弦のナットをゆるめてもらい、「片方だけかなり低い場合」を弾いてもらいます。

音程がずれていると特有の違和感があるのが分かります。

あとはどちらが低いかを教えてもらい、2音を何度も聞き比べることで、「こっちが高い/低い」という感覚が分かっていきます。

これが分かればタムやスネアのスナッピーを外した状態での「ナット付近のピッチ」を均等にそろえる事ができるようになり、特定の音(例えばドの音)だけが鳴るという状態に近くなります。

その結果、倍音を含めて「空いている周波数帯」が多くなることで他の楽器の音と競合しにくく、さらに「特定の音程のみ強調」しているため、きっちりと前に出る音になります。

2.タムの鳴るポイントについて

実験として、フロントのタムのボトムのヘッドを外して表だけヘッドが張ってある状態にします。

次に、表のヘッドを「張力が無くなってベシャンというような音になる」までゆるめます。

その状態から少しずつ締めていくと、ある時点からタムっぽい音になります。

そして、もう少し締めると「すごく鳴る」ポイントがあることが分かると思います。

ここがヘッドが最も鳴るポイントであり、音量を稼ぎたい場合はこの付近で表面のチューニングを行うと良いです。(下手するとスネアより鳴るようになるので注意)

3.倍音から逆算した4度差チューニング

「ド」の音が鳴ると「ソ」、「ド」、「ミ」、「ソ」・・・という風に倍音が鳴るわけですが、筆者はこれに基づいて、ボトムの音を4度上でチューニングしています。

ちなみに4度とは、2つの音の音程差で、ドから見てファは「ドレミファ」ということで4度差があるということになります。

正確には「完全4度」となるのですが、詳細な説明は今回の記事に必要ないので省略します。

ドの倍音のソ、ド、ミ、ソ、・・・に対してファの倍音はファ、「ド」、ファ、ラ、「ド」、・・・・です。。

表面の音程のドが裏面の倍音と重なる事より、結果として「ド」の音程がすごく強調され、抜ける音になります。

なお、4度差チューニングのやり方は、「ドレミファソラシド」というのは誰でも歌う事ができると思いますので、裏面を手でミュート下状態で表面を叩き、その音から「ドレミファ」と歌うと、裏面の高さ(もちろん表面の音はミュートした状態の音程)を簡単に決定することができます。

4.バスドラと筆者が使用しているシンバルについて

バスドラについては、よく張った方がダブルがやりやすいと感じる人が多いかもしれませんが、音程を「低め」にした方が、他の楽器とかぶるまでの倍音を増やせるのでおすすめです。

楽器単体としては微妙な音になるかもしれませんが、バンドサウンドの中では逆にズシンとくるような映える音になったり、がっつり聞こえる音になったりします。

最後にシンバルですが、スタジオにあるシンバルを弱く叩いてみると、「ボワーン」といった低音が鳴る安物シンバルがよくあります。

強く叩くとシンバルらしい音になるのですが、余計な倍音が入る証拠で、曲中にシンバルを叩いた時に他の音を食いまくってしまいます。

ちなみに、筆者はPaiste2002シリーズを愛用しています。

2002 –モリダイラ楽器

Paiste2002は、強く叩かなくても「きらびやかな音色」を出す事ができ、さらにバンドサウンドで埋もれません。

そのため、太鼓と同じく他の音を邪魔せずにきっちりと綺麗な音色を前に出すことができます。

ただし、高いです(笑)値段相応ですね。

5.おわりに

時間の縛りがあるバンド練習の時には、筆者は「チューニングのため、5分だけ無音状態を作って」もらって、以下を行っています。

①まずタムの打面を叩いてみて振動を殺すほど締めすぎていたらさっと緩め、

②ナットの近くを叩いて均一にし、

③裏面をさっと4度上に近い音程にしてナットの近くを叩いて4度差を作りつつ均一に張り、

④最後にバスドラを緩める必要があればさっと緩める。

これとPaiste2002シンバルでの力加減で、「きっちりドラムの音が前に出るが、他のパートもがっつり前に出てくる」サウンドになるよう調整しています。

筆者は生粋のドラマーに比べたらレベルは落ちるのですが、一緒に演奏した方から「歌いやすい」「演奏しやすい」「分かりやすい」との評価をよく頂いており、明らかに自分より上手く叩けるドラマーよりも先にサポートやバンドのお誘いの声がかかることもあります。

楽器の音色やチューニングは、単体での良い音をめざしがちですが、バンドのサウンドが鳴っている中での良い音をめざすことも非常に重要なことではないでしょうか。

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