楽器店などでたまに目にする“オイルフィニッシュ”の文字。
何か特別な仕上げがされていることはわかるが、実際に何がされているのかはよくわからない、といった方は少なくないはず。
今回の記事はそんな方向けにオイルフィニッシュとは何か、という点からオイルフィニッシュの魅力までお伝えしていきます!
1. そもそも塗装にはどんな種類があるの?
・基本は四種類!
皆さんギターやベースの塗装というとどんなものが思い浮かびますか?
ラッカー塗装、ウレタン塗装などが思い浮かびやすいかもしれません。
現在主流となっている塗装は基本的に「ラッカー系」「ポリウレタン系」「ポリエステル系」そして今回解説する「オイル系」の四種類に分けられます。
まず「ラッカー系」に関して。
ラッカー塗装はヴィンテージの楽器やハイエンド楽器によく用いられます。
コストはかかるものの塗装後も溶剤が揮発していく特徴から塗膜を薄く、かつ修正可能に仕上げることが出来ます。
また、ヴィンテージ特有のクラックや黄ばみ、塗装の経年劣化はラッカー特有のものです。
後述するポリウレタンなどは硬度が固くラッカーのような使い込んだ味は見た目に出にくいです。
次に「ポリウレタン系」。
これが現在流通しているギター、ベースの塗料ではもっともメジャーかもしれません。
というものの最大の特徴は乾燥時間の速さとコストパフォーマンス。
廉価盤ではないが大量生産する際の塗装に向いている塗料のため、近年の竿にはよく見かけられます。
コスパが良いから質はよくないのかといわれますと、そうでもありません。
先ほどのラッカーなどに比べて塗装硬度が固くきれいなツヤが出る事などメリットもあります。
「ポリエステル系」
ポリエステル系はポリウレタンと似た特徴を持つものの、より安価でコスパに優れます。
最安値を追求できる為廉価ギターなどには多く使われているものの、使用条件が細かく仕上がりが難しい塗装になります。
そして最後が今回紹介する「オイル系」。
乾燥時間が短かいことや、設備投資がいらないことが特徴の塗装になります。
一部メーカーではオイルステインという表記もありますが、基本的にはオイルフィニッシュと呼ばれています。
・オイルフィニッシュの加工手順
加工手順としては非常にシンプルで、研磨して木地処理を終えた木材にオイルを塗りこみ研磨する、この繰り返しになります。
そして木材にオイルを浸透させコーティングしたものがオイルフィニッシュになります。
一見するとシンプルで簡単に見えますが、シンプル故にきれいに仕上げる事が難しいのがこのオイルフィニッシュ。
その他の塗装と比べて塗装慣れしていても色むらが出やすい点が難点であり味でもあります(僕は個体のオリジナル感が出て好きなのですが…。)
2.オイルフィニッシュの良し悪し
では次はオイルフィニッシュのウリと注意するべきデメリットについてみていきたいと思います!
・オイルフィニッシュのメリット
良く掲げられるメリットの一つに楽器の鳴りの良さが挙げられます。
ラッカーやポリウレタンなどと異なり塗膜そのものを形成しないオイルフィニッシュは、楽器の振動を邪魔しない塗装になっています。
そのため楽器の音のレンジが広く豊かになり鳴りがよくなるといわれています。
また、質感もメリットの一つです。
塗膜のない塗装ゆえに、独特のすべすべ感と肌になじむ質感が特徴でネックなどの塗装をオイルフィニッシュにすると、他の塗装のネックには戻れないという人もいるほどです。
これによる運指のしやすさやなじみの良さは他の塗装では得られないオイルフィニッシュ特有のものです!
・オイルフィニッシュのデメリット
デメリットは傷のつきやすさになります。
塗膜のない塗装ゆえに傷がつきやすく、また傷がつくと木材そのものにダメージとして残ってしまうことがオイルフィニッシュの持つ弱点です。
また見た目にこだわる方にとってはカラーバリエーションの少なさも一つのデメリットになりうるでしょう。
また柔らかい木材にオイルフィニッシュをしてしまった場合、前述した鳴りの良さがあだとなり音の輪郭が損なわれてしまうケースもあるようなので注意が必要です。
3.オイルフィニッシュのお手入れの仕方
では最後にオイルフィニッシュのお手入れ方法です!
オイルフィニッシュの場合塗膜がないため摩擦に弱く、オイルワックスを用いたメンテナンスで摩擦からの保護を行わねばなりません。
また、オイルワックスを用いることで独特の色落ちをきれいに作り出すことも可能です。
また日本でオイルフィニッシュの竿を所有する場合、お手入れはなおさら必須になります。
というものの季節感の温度や湿度変化の激しい日本では木材は大いにその影響を受けやすいためです。
正しいメンテナンス方法を学んで楽器を長持ちさせましょう。
・いざお手入れ実践
オイルワックス、塗布用クロス、仕上げ用クロスの三点セットがお手入れには必要です!
まずは楽器を仕上げ用クロスで一度軽くふき、ほこりや細かいチリを除きます。
この工程を除いてオイルワックスを拭きこんでしまうと楽器に傷がつく可能性が出てしまうので要注意です!
次にオイルワックスを塗布用クロスに出し、木材に満遍なく塗り込んでいきます。
ポイントとして冬場などオイルが固まりやすい季節は使用前にオイルを振るなどして溶かしておくことが重要です。
そして最後はまた仕上げ用クロスで乾拭きし、15分ほど放置して完成です!
一つ注意点があり、今回使用した塗布クロスは放置すると自然発火の危険性があるため、よく濡らした状態で処分してください。
いかがでしたでしょうか?
オイルフィニッシュの魅力が少しでも伝われば幸いです!
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